アメリカ・カリフォルニアでの研究留学
この度、2021年7月から2023年6月までの2年間、藤村幹教授の御高配をいただき、アメリカ合衆国・カリフォルニア州・スタンフォード大学脳神経外科・Steinbergラボに基礎研究を目的に留学させていただきました。2015年から3年間留学されていた伊東雅基先生、2018年から2年半留学されていた内野晴登先生に引き続いての形となります。
コロナウイルス蔓延で渡航困難な時期が続きましたが、2021年6月末に渡米となりました。渡米後も、コロナウイルスが猛威を振るっており(そのときはデルタ株)、ラボのメンバーともども戦々恐々としながら研究生活を送っていました。コロナの余波によるサプライチェーンの問題が研究にも影響しており、実験器具や試薬をオーダーしても、製品の在庫切れが目立ったり、配送が著しく遅延することがしばしばありました。徐々にコロナウイルスの影響も緩和され、帰国するころにはほぼ普通の日常と同じくらいまで戻っておりました。
研究室のPIであるGary Steinberg教授は、Stanford内でも、アメリカの脳神経外科・脳卒中のコミュニティでも、著明な脳神経外科医で、研究室の規模も大きく、NIHなどの大型グラントを複数獲得しているほか、個人からの寄付金も多いようで、自身の患者さん(大富豪)がラボに訪問しに来て、我々の研究を現場でプレゼンするという機会があり、最終的に日本では聞いたこともない額の寄付をしてくれるという出来事がありました(寄付者にとって税制上の優遇も大きいようです)。そのおかげで、研究の活動資金を潤沢にお持ちで、試薬などの購入には金額的な制限がほぼなく、自分の裁量で購入することができたことが非常に助かりました。
Steinberg教授はもやもや病のバイパス手術を年間120例こなしているとのことで、忙しそうにしておられましたが、研究室に足繁く顔を出してくれて、とても親身に接してくれました、ラボのメンバーは多国籍で研究バックグラウンドも様々で、滞在中はとても刺激的な毎日を過ごせました。ラボに日本人が自分しかいない分、英語でのコミュニケーション力・プレゼンテーション力はだいぶ鍛えられました。
ラボでは、①脳梗塞モデルマウスを用いた光遺伝学的刺激による機能回復に関する研究、②もやもや病iPS細胞を用いた各種細胞の分化誘導と共培養、③もやもや病患者検体を用いたメチローム解析、④もやもや病患者検体を用いた末梢血単核球(PBMC)RNA-seq、といったプロジェクトに関わらせていただきました。大学院博士課程のときに習得したiPS細胞培養・分化誘導の知識・技術が活きるなど、自分の得意分野のテーマも与えてもらったりと、充実した日々を過ごしました。不測の出来事で研究を一時中断せざるを得ない期間もありましたが、最終的には、③のテーマで論文を執筆することができ、Translational Stroke Researchに掲載されました(Transl Stroke Res. 16: 1198-1213, 2025)。
プライベートでは、渡米当初はアメリカの生活に慣れるのに苦労しましたが、ほぼ毎日快晴で、気候も温暖で過ごしやすく、全米の中でも治安の良いエリアに大学キャンパスがあり、住民や店員も基本的に親切で、気持ちよく生活することができました。スタンフォード大学に所属している日本人研究者やサンノゼの日系企業の駐在員など日本人も多く、日本人の知り合いが増えたのも嬉しいことでした。週末は、現地の草野球チームにも所属して野球に汗を流したり、メジャーリーグ観戦をすることもできたりと、野球班としても貴重な経験ができました。しかし、物価高騰の波はカリフォルニアでもすさまじく、外食は高嶺の花で、ガソリン価格も渡米当初と比べて1.5倍となり、円安もあいまってついに日本よりも値段が高くなってしまいました。 もちろん、順風満帆なことばかりでなく、つらいことも多くありましたが(とくに研究)、医師としても研究者としても視野が広がり、異国での生活というのもふくめ人間的な経験値も増しました。臨床経験が少し減るという面と経済的負担は否めませんが、総合的には海外留学を経験することができて非常によかったと感じます。快く留学へ送り出していただいた藤村幹教授はじめ医局員の皆様に改めて感謝申し上げるとともに、若手の医局員には是非海外留学を目指してほしいと思います。




