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臨床研究

脳動脈瘤破裂機構の解明
脳動脈瘤が破裂するメカニズムは未だに不明です。これを解明すべく、臨床研究と基礎実験の両面から研究しています。手術で摘出した動脈瘤標本に対して、走査電子顕微鏡や免疫染色で動脈瘤壁を観察するとともに、術前3D画像から流体解析を行い、力学的要素と病理学的要素を関連づけて解析しています。併せて、旧来型ラット脳動脈瘤モデルを改変して容易に破裂する大型動脈瘤モデルを作り、薬剤投与実験を行っています。この研究が実れば、手術に頼らずに内科的な方法でクモ膜下出血を防止することができるようになるかもしれません。 
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脳神経外科領域疾患に対する脳ネットワーク解析
高次脳機能の他、運動、言語など一次中枢がはっきりしている機能においても複数の脳領域が関与しています。特定の領域の障害に対する可塑性にも大きなバリエーションがあり、非障害部分の脳の働きの解明に脳のネットワークの概念を理解するヒントがあると考えられます。これまでは、定量的な解析手段は限られていましたが、近年、MRIなどにより、脳の構造的、機能的結合を表すパラメーターを数学的に処理して、個々人の脳の構成を定量的に算出することが可能になり、今後、新たな病態が可視化されると考えられます。我々は現在、もやもや病という慢性虚血をきたす脳血管障害が、80年程の人間のライフスパンにどのような影響を脳に与えるかを研究しています(図参照)。発達や加齢性変化への影響をモニタリングすることは、将来的に的確な時期での外科的治療介入や未知の薬剤治療へ繋がっていくと考えています。
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EZO (effective zone for mobile stroke team) trial 
近年の血管内治療の進歩により脳梗塞の治療が進歩していますが、新しい治療を行う医師の数が少ないため、地域によっては治療が適切に行われないところもあります。そこで、北海道大学病院は関連施設と協力して、専門医が出張し治療支援を行うシステムを構築いたしました。この治療支援システムが科学的に有効であることを証明することができれば、より多くの方に適切な医療を提供できる可能性が広がります(図参照)。今後ますます、医療の質の地域格差が拡がることが懸念されており、このことを解決する手段の一つとして期待しています。
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電磁回転式(EMS)粘度計を用いた脳梗塞患者の血液粘度の測定
脳梗塞発症時に血液粘度は上昇しますが、近年はその測定の意義がほとんど顧みられていない状況でした。今回、簡便な操作で粘度測定が可能となった電磁回転式(EMS)粘度計(機器開発をした東京大学生産技術研究所酒井研究室との共同研究)を用いて、病型診断を基に血液粘度の測定意義を再検討しました。その結果、血液粘度は脳梗塞の全ての病型で同様に上昇しているわけではなく、 ラクナ梗塞(small artery occlusion:SAO)で発症時に有意に上昇しており(図参照)、脱水の関与が考えられました。今後、ずり速度依存性、全血と血漿の粘度比較などを検討し、より詳細な解析をしたいと考えています。
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脳腫瘍に対するメチオニンPETの有用性の検討
PET検査は癌領域では欠かせない検査になっていますが、脳腫瘍の診断においてはメチオニンという核種を使用した検査が有用と言われています。現在、メチオニンPETの有用性を証明し、かつ薬事承認を得ることを目的とした臨床研究を二つのプロトコールで行っています(核医学診療科との共同研究)。一つが脳腫瘍の再発と放射線による脳障害(放射線壊死)を区別する試験です。悪性脳腫瘍に対して放射線治療は必須とも言える治療法ですが一定の割合で放射線障害が生じます。従来のMRIやFDG PETではこの放射線障害と再発の区別をつけることが困難ですが、メチオニンPETでは再発病変を正確に判定できることが期待されています(図参照)。もう一つが、代表的な脳腫瘍である神経膠腫の浸潤範囲をメチオニンによって正確に把握できることを証明する試験です。両試験とも成功が各方面から期待されている臨床試験です。
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個別化医療に向けた脳腫瘍バイオバンクの確立
がん治療において、従来のような疾患別の治療法ではなく、腫瘍特有の遺伝子異常(体細胞変異といいます)に基づいた個別化医療が実現しつつあります。近年の大規模ゲノム解析により、脳腫瘍においても特有の遺伝子異常が徐々に判明しています。近い将来、脳腫瘍治療においても個別化医療が導入されることを想定し、その基盤作りのためのバイオバンク確立を行っています(病理・遺伝子診断科との共同研究)。また、このバイオバンクで得られた情報を基にした更なる臨床研究も計画中です。

 

小児がん拠点病院としての取り組み、小児脳腫瘍に対する陽子線治療
当院は小児がん拠点病院に指定されています。多くの小児脳腫瘍の患者さんの治療を行っていますが、小児脳腫瘍はそもそも非常に稀な疾患であり、単施設での症例集積や臨床試験は困難です。当院では日本小児がん研究グループ(JCCG)と連携し、多くの臨床研究に参加しています。例えば、中枢性胚細胞腫瘍に対するゲノムワイド関連解析、小児脳腫瘍分子診断などです。また、当院に導入された陽子線治療は、平成28年から小児腫瘍に対して保険適応となりました。陽子線治療は、通常の放射線治療と比較し、正常組織に放射線治療の影響が少なくなるため、小児脳腫瘍の患児には大変大きなメリットがあると考えられています。当科では放射線治療科と小児科と密に連絡して積極的な導入を行っています。

 

パーキンソン病に対する脳深部刺激療法後に生じる高次脳機能変化に関する検討
パーキンソン病、本態性振戦をはじめとする不随意運動疾患を対象に行われる脳深部刺激療法(DBS) (図参照)では、術後、一部の症例でうつ状態やアパシーといった精神障害や認知機能障害を呈することが明らかにされていますが、その機序について十分に解明されていません。本研究は北大病院の自主臨床研究として(自014-0032)、DBS後の高次脳機能について各種臨床心理検査と機能画像を用いて前向きに調査し、高次脳機能変化と特定の脳領域の活動変化との関連について解明することを目的としています。
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